エネルギー本音トーク

編集 エネルギー本音トーク編集委員会

平成184

 

人類はエネルギーをふんだんに使って、豊かで快適な文明を手に入れましたが、一方ではエネルギー資源の確保は国際間の激しい争奪を生み、戦争の惨禍を招いたことも事実です。発展途上国では、人口の増加と併せて現代文明へのアプローチから、エネルギー需要が急激に膨張して、国際的にもその影響が拡大しています。

昨今の原油価格の高騰と高値の維持基調は、この様な需要の急増に加えて、産油国の供給余力の減退、精製施設の不足、オイルピーク問題、市場の投機性などが重なった構造的なものと指摘されています。またエネルギー消費に伴うCO2排出と、地球環境維持のジレンマも大きな国際問題です。グローバルにエネルギー事情を見れば、各国にエネルギー政策の大きな転換の動きが見られます。ことに原子力発電への期待が改めて急速に高まり、原子力新時代の幕開けを窺わせています。

二度の石油ショックを経験した我国は、備蓄の増強、原子力発電による自給率改善、再生エネルギーの活用、エネルギーのベストミックス、省エネの推進など、エネルギー・セキュリティー確保を目指していますが、未だにエネルギーの80%を海外に依存し、先進諸国の中では最も脆弱な供給構造と言わざるを得ません。国はエネルギー政策基本法を制定し、昨年は原子力政策大綱を閣議決定しました。原子力を基幹エネルギーに位置づけ、核燃料サイクルを推進することを再確認しました。

 私達は、企業・組織から身を引いた立場ではありますが、この様な状況を注視し、我国のエネルギー・セキュリティーの確保と国際協調を願って止みません。私達は立場の違いを超えて、エネルギー供給に人生を賭けて来た者として意見を結集し、国家エネルギー戦略の必要性など多くの「政策提言」をして参りました。しかしながら、それぞれの経験を踏まえた「原子力への熱い想い」、「次世代に伝えるメッセージ」、あるいは「社会への警鐘」などは「政策提言」に盛り込むべくもなく、会員の思いを生々しく本音で吐露することといたしました。ここに「エネルギー本音トーク」として掲載し、諸賢に問うものであります。

 

備考:各稿または全般に関するコメント、ご意見は小川博巳編集幹事まで(下記Email)に連絡下さい。

コメント・意見送付先:chogawa@jcom.home.ne.jp

 


 

目次

(項目をクリックすると該当文書が表示されます)

 

第一章  日本と世界のエネルギー... 3

1.1 『みなで考えよう明日の地球』ーおじいさんの手紙ー (荒井利治). 3

1.2 避けて通れるか原子力土井 彰)... 4

第二章       エネルギー・原子力の国家戦略と政策に関して... 6

2.1 エネルギー安全保証のために自給率50%を目指せ!原子力と自然エネルギーが鍵(石井正則)    6

2.2 戦略性の感じられないエネルギー政策:政策目標と達成レベル(石井正則)... 7

2.3 我が国のエネルギー源は他国任せで良いか?―エネルギー自給率50%の試案―(金氏 顯)    8

2.4 電力自由化のなかでの原子力(山崎吉秀)... 11

第三章  科学技術と地球環境を考える... 16

3.1 「安心」の鍵は何だろう(小笠原英雄)... 16

3.2 技術者の役割 -- Technologically Correct(堀 雅夫)... 17

3.3 原子力施設のリスクに関する考察―リスクの緩和策とべネフィット(石井正則)... 27

3.4 日本人は自らの安全システムを創造する能力が無いのでは?という外人記者の言葉(松田 泰)    52

3.5 今こそ築こう、原子力の安心と信頼を!(安全・安心の現場から)(伊藤 睦)... 64

3.6 原発の安全問題を考える―志賀原発2号の地裁の耐震判決に関連して(石井陽一郎)    122

3.7 原子力安全論での意見交換(石井陽一郎)... 142

3.8 地球温暖化問題と原子力(石井陽一郎)... 162

第四章  放射線を正しく理解しよう... 185

4.1 エネルギー正論「放射線を正しく理解して付き合おう」(竹内哲夫)... 188

4.2 放射線を正しく理解しよう「私(原子力エンジニア)は放射線とどのように付き合ってきたか?」(太組健児)  211

4.3 迷信の根絶:非常識を破る着想と実践記―嫌われた「人形峠残土」を「マホロバ癒しのラドン福音」に!率先実行、魁より始めた“放射線は人間の活性素”(竹内哲夫)... 278

第五章       エネルギーの使い方を考える... 317

第六章  私達の課題を考える... 322

6.1 次世代への伝言“キセル屋原子力屋”の卒業論文(竹内哲夫)... 325

6.2 人類エネルギー問題解決のために原子力技術の伝承を(益田恭尚)... 542

6.3 日本の原子力広報を憂う(森 雅英)... 582

6.4 入学試験問題に“原子力”と“放射線”を!(竹内哲夫)... 598

6.5 エネルギーの国家戦略と 教育を考える(小川博巳)... 620

6.6 子供たちに何を引き継ぐか(土井 彰)... 651

6.7 エネルギー問題を学校で教えよう(荒井利治)... 679

 


 

第一章  日本と世界のエネルギー

 

 

1.1 『みなで考えよう明日の地球』ーおじいさんの手紙ー (荒井利治)

 

シイちゃんへ

おじいさんより

 高校の入試合格おめでとう。おばあさんとトモおばさんはシイちゃんの喜んだ顔を見たいとにこにこで出かけましたが、私は大阪に行く用事があって一緒に行けずとても残念でした。私からのお祝いに図書券をことづけましたので、好きな本を買ってください。

 さておじいさんが大阪に出かけたのは、関西の4っの大学の学生50名位と、おじいさんとほぼ同年代の10名が集まって討論する会『学生とシニアの対話in関西』に参加するためです。討論のテーマは「地球は人々が今のように化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)を使い続けて大丈夫か?」でした。

シイちゃんは中学の社会科や理科の授業で、このような話を習ったことがありますか。その答えは『大丈夫でないどころか、かなり危ない。』なのです。

 その理由は化石燃料を燃やしてそのエネルギーで発電したり、自動車を走らせたりすると必ず炭酸ガスが出ますが、これが大気中で多くなると地球温暖化という現象が起こる。そしてこれが地球上の気象をおかしくしたり、極地の氷を融かして海水面が上がり、地面の低い国は水没するおそれがあるのです。

 このような懸念は、実は70年ほど前から一部の学者によって指摘されていましたが、はじめは本当かなと疑う人が多かったのです。ところがその後多くの学者が調査、研究を続けた結果、地球上の平均気温は間違いなく異常な率で上がっている。また大気中の炭酸ガスの濃度も上昇していて、その原因は19世紀の産業革命以降人類が化石燃料を大量に消費していることによると考えられるという結論になりました。

 国連はこの地球温暖化の防止という重大な問題を話し合う国際会議を召集し、1995年ベルリンの第1回から昨年モントリオールの第11回まで毎年相談を続けています。特に1997年の第3回は日本が議長国となって、京都で開かれ、炭酸ガスを主とする温暖化ガスの削減目標を定めた京都議定書をつくりました。ところがこの議定書の各国での承認がなかなか進まないのです。特にロシア、米国という大国が難航し、ロシアはやっと昨年承認、米国はいまだに承認していません。おもな理由は、温暖化ガスの削減が先進国のみに科せられ、中国、インド、アフリカなど人口が多く、今後大量にエネルギーを消費すると予想される開発途上国には科されていないという点です。

 経済の発展、それに必要なエネルギーの消費、それに伴う地球環境の悪化防止、この3つを共に成り立たせるのは大変な難問で、各国とも自国の状況と利益を考えるので、なかなか足並みがそろわないのです。しかも最近は石油の供給量が近くピークに達し、以降減少するという『ピークオイル説』が唱えられ、昨年米国の石油精製施設がハリケーンの被害にあったことで石油価格が急騰したことも重なり、化石燃料の先行きに不安がもたれています。そこで米国をはじめ各国では長らく低迷していた原子力に対する関心がにわかに高まってきました。

 では日本はどうなのでしょう。戦後60年、ドン底から立ち上がり、国民の血のにじむ努力で米国に続く世界第二の経済大国になりましたが、それを支えるエネルギー資源はほとんど無く、完全に輸入に頼っています。しかも輸入先は政治的に不安定な中近東が85%を占めている危うさです。しかしエネルギーの使い方では日本はまさに金メダルで、過去2回のオイルショック(1973と1979に石油の価格が高騰)の際には、少ないエネルギーで効果を出す省エネ技術で克服しました。

 発電の種類も水力、火力から原子力へと多様化し、現在日本の電気は化石燃料による火力が6割、原子力が3割、水力とその他が1割となっています。化石燃料が炭酸ガスを出す犯人ですからこれに代わるものは無いか?自然の力を利用した太陽光、風力、地熱などがありますが、いろいろ問題がありとても火力を肩代わりすることはできません。

 残る切り札は原子力ということになります。化石燃料は化学反応でエネルギーを出すのですが、原子力は核反応によっているので原理的に炭酸ガスは出ません。しかし原子力はその生い立ちが原子爆弾という形で登場したので、どうしても怖いものというイメージがあります。これまでほぼ50年にわたる日本の原子力の開発は、関係した人々の懸命な努力で安全を第一に進められてきました。これまで米国のスリーマイルアイランド、旧ソ連のチェルノブイリのような大事故は起きていません。しかし小さなトラブルでも原子力だと大きく報道される特殊な風土で、原子力発電所の用地は非常に得にくくなっています。一般国民の不安を取り除くには、安全な運転を続けて事実で示す以外に方法が無いようです。

 日本がエネルギーの面で世界に貢献する道は、急激な工業化の過程で発生した公害の対策技術、オイルショックで培った省エネ技術、それにものを大切にする『勿体ない』の精神を輸出することだろうと思います。

それにしてもエネルギー問題に対する国民の関心の低さは異常です。大阪の大学生との討論でもこの危機意識を持つことの重大性と、原子力への更なる取り組みの必要性が主な結論でした。世界の人々が一緒に乗って宇宙を飛んでいる『宇宙船地球号』がこれからも安全に飛び続けるために皆でこの問題を真剣に考える必要があります。

 今日はちょっと判りにくい話になったかもしれませんが、是非シイちゃんがどう感じたか聞かせてもらえるとおじいさんはとても嬉しいのです。

では体に気をつけて楽しい高校生活を迎えてください。

さようなら

トップに戻る 目次に戻る

 

 

1.2 避けて通れるか原子力土井 彰)

 

はじめに

石油を中心とした化石燃料の時代が急速に去る今世紀、国家、人種を問わず全ての人類は生命と文明の維持に必要なエネルギーと環境を求めなければならない。飽食三昧、レジャー漬けの多くの市民はあまり考えたこともなく、危機感もほとんどない。エネルギー源として、あるいは放射線利用としての原子力を本当に捨てるのか、今まさに市民にその選択が問われている。

 

(1)人類とエネルギーとのかかわり

今世紀の重要課題は、(1)増加し続ける人口を支える経済発展、(2)この経済発展を支える資源と食料の確保、(3)このような条件下での環境の保全でこれらが三竦(トリレンマ)となっている。

人口は今後も増加し続け、エネルギーの大量消費にともなって環境破壊が加速度的に進行すると共に、化石エネルギーの枯渇が問題となる。人類が持続可能な発展をしてゆくには、環境を保全しつつ、限りある環境資源やエネルギーを有効、公平に使用することが必要不可欠である。