エネルギー基本法
 
正式にはエネルギー政策基本法で、平成14年6月7日に成立した議員立法による法律。これまで日本のエネルギー政策は、新エネ、省エネ、原子力等の個別事象に対応して進められてきたが、政策の根幹となる原理、原則が無かった。今回この基本法によりその理念、哲学を示すいわばエネルギーの憲法ができた。同法ではエネルギー政策の基本方針を「安定供給」「環境適合」「市場原理」とした上で市場原理の活用は、安定供給と環境適合を十分考慮したうえで進めなければならないと位置づけた。この基本方針のもとで国、地方公共団体、事業者の責務、国民の努力規定が設けられている。政府は概ね3年ごとにエネルギー政策の基本的方向を定める「エネルギー基本計画」を閣議決定することが定められた。この基本計画は経済産業大臣が、関係行政機関の長の意見を聞くとともに、総合資源エネルギー調査会の意見を聴いて案を作成するとされている。 (荒井利治)
電力供給責任
 
電力自由化が始まる以前、各電力会社には電気を供給すべき区域が決められていて(供給区域)、この区域内では独占的に電気を供給することが認められていた。その代わり、特別な理由が無い限り電気を送ることを拒否できないことになっていた(供給義務)。東京電力で言えば関東一都六県に山梨県と富士川以東の静岡県が供給区域である。
200
0年に導入された電力自由化で大口の需要家(全電力量の約30%)が自由化されたが,これらの需要家は既存の電力会社以外からも自由に電気を買うことができる。従って、既存の電力会社もまた電気を供給する義務はない。しかし、この場合も、既存の電力会社は最後の供給者としての役割を求められている。
これまで、電力会社は供給責任を果たすため、供給区域内の電力需要の動きに見合った十分な供給力を確保するための努力を払ってきた。しかし、電力市場が自由化され、複数の電力供給者が競争する場合、既存の電力だけで供給責任を負うことは不可能となる。市場全体として十分な供給信頼度を保持できる制度設計が切に望まれる。(池亀亮)
発電コスト
 
発電には水力,火力,原子力などの種類があるが、発電原価はいずれも1kWh当り何円で示される。
発電原価は資本費、運転維持費および燃料費とで構成される。資本費は主として発電所の建設に要した費用を回収するためのコスト(減価償却と金利)で、回収する年数によって変動する。運転維持費は毎日の発電に要する人件費や修繕費が主な項目である。燃料費は発電のために燃やす石油やガス、原子力発電の場合は核燃料サイクルコスト全体(ウラン調達、濃縮、燃料加工、再処理、廃棄物処理を含む)を言う。
原子力発電所は火力発電所と比べると、建設費、従って資本費が高いが、燃料費が安いという特徴がある。従って、原子力発電所は運転開始当初は火力に比して発電原価が高くても、運転年数が進むに従って減価償却が進んで、資本費が小さくなり、或る年数以降では火力発電原価を下回ることになる。
原子力発電原価のうち、燃料費に含まれる核燃料再処理費と高レベル放射性廃棄物処理費についてはまだ不確定な要素が有るものの、経産省の試算によれば40年間運転した場合の平均発電原価はガス火力が1kWh当り6.4円程度(内燃料費が6割)であるのに対して、原子力は5.9円程度(内燃料費は3割)で十分競争力を持つとされている。(池亀亮)
エネルギーの安全保障(エネルギー・セキュリティ)
 
エネルギーの安全保障とは、人間の生活には欠くことの出来ないエネルギーの供給をいかに安定に確保するかと言うことである。
 昨今、エネルギーは戦略商品か、普通の商品(コモディティ)かの議論も活発となり、エネルギーの供給に関して、市場原理が働き、比較的安定した価格での供給確保が可能であるとの見方が強調され、エネルギー資源の量的な供給が困難になる可能性が軽く見られている傾向が強い。  むしろ行過ぎた電力自由化のための規制緩和による制度上の不備や、余剰供給能力を低水準に抑制することなどにより、供給の弾力性が低下し、短期的に需給にアンバランスが生じ、価格高騰が起こることが、2000,2001年に米国で発生したエネルギー危機で現実のものとなった。
 一方、本質的には、現在のエネルギー資源の大半は化石燃料に依存しており、その埋蔵量は有限であり、その産出も一部の国に偏在すると言う現実が厳然として存在するので、戦略商品としての側面は決してなくなっておらず、将来の世界人口の増加とそれに伴うエネルギー需要の増大を考えると、益々その側面が大きくなって来るものと予想される。
 世界各国のエネルギー政策は、その国のエネルギー事情により異なっているが、わが国の場合、工業先進国であると同時に、エネルギー小資源国でもあるので、省エネルギー化、緊急時備蓄の増強、石油依存度特に中東依存度の低下、エネルギーのベスト・ミックス化、エネルギー自給率の向上、化石燃料代替エネルギーの開発などが、エネルギー政策の基本となり、その一部は施策されているが、その他にエネルギー資源の共同開発、輸送ルートの安全確保、長期的なエネルギー資源購入資金の確保など、外交、経済面での政策も併せて、国民的な合意の下に、より総合的な政策を推進する必要がある。  
その点わが国は、世界の他の工業先進国に比べ、エネルギーの安定確保に対する国民の合意形成もなく、「国家百年の計」として不可欠な、明確な総合的エネルギー政策が不在であり、この事がわが国の将来に大きな禍根を残すのではないかと大いに懸念される。  因みにわが国の石油依存度は53%、その内87%が中東に依存しており、エネルギー自給率に至っては、準国産エネルギーと呼ばれる原子力を含め僅か21%で、その大半は原子力に依っているのが現状であるが、その肝心の原子力の推進が侭ならないと言う状況である。 それに加えて、昨今地球環境問題がクローズアップされ、わが国も京都議定書を批准し、国際公約を行う方向にあるため、益々化石燃料の使用を制限しなければならない状況の下、それに代わる新エネルギーを含む代替エネルギーの開発も進んでいないわが国としては、エネルギーの安定確保の政策を、国民的な合意の下に、原子力オプションも入れて、早急に策定する必要がある。               (杉野榮美)
 以上に関して、更なるご関心のある方は、このホームページの「私の意見」に収録されている下記の文をご参照頂きたい。
@エネルギーのキリギリス(杉野榮美)、 Aエネルギー問題と原子力(益田恭尚)
Bエネルギー問題の解決には原子力は不可欠である(益田恭尚)
グローバルスタンダード
 

冷戦の終結後、東西の壁を越えて貿易や経済活動が広がり、情報通信の発展により24時間の取引が可能となるなど、時間と空間を超えた情報交換や取引が可能になった。世界の政治、経済、社会構造の大転換によって、国際化の中身も大きく変わりつつある。
この結果、人口増加問題、食糧問題など国単位では解決できない課題や、国境を超えて拡散する環境問題や大気の温暖化など、地球規模で解決を図らなければならない多くの問題が出てきた。このように国家間や地域ブロックを超えて、地球規模の課題に対処するには、グローバルな枠組みで問題を捉え、世界中どこでも通用する物差しが必要となる。そうした地球規模の物差しを「グローバルスタンダード」(世界標準)と呼んでいる。
グローバルスタンダードの一つとして、世界的な計量単位のIS標準など、国際的に各国から承認されたものをデジュールスタンダード(dejure standard、公的標準)という。一方では、ある特定のメーカが開発した製品や技術が世界中に普及し、それが事実上の標準として扱われる場合を、デファクトスタンダード(defact standard、事実上の標準)という。新しい原子力発電システムとして、日本が中心になって開発を進めたABWRやAPWRは、デファクトスタンダードの一例といえる。
為替や貿易の自由化が進む中で、急速な技術進歩と新技術の普及の速さは、欧米企業の激烈なシェア競争を招き、結果的に多くのデファクトスタンダードを生み出した。日本はこれに出遅れていることもあって、世界標準とはいえアメリカンスタンダードではないか、或はアングロサクソンスタンダードではないかと揶揄する声も聞かれている。デファクトスタンダードを制することが、企業にとっては巨額なロイヤリティー確保に繋がるので、グローバルスタンダード戦略は企業経営の要であると共に、国やEUなど地域を挙げて標準化戦争が激しく展開されつつある。(小川 博巳)

電力の自由化
 

旧来、商品としての電力は一般電気事業者(いわゆる電力会社)が該当する供給区域内の消費者に小売りすることが大原則であり、供給される電力は自社で発電するか、卸電力会社(卸契約)あるいは他の電力会社から購入(融通契約)して確保してきた。
電力料金は各社毎に国の認可を受けて決められており、これには発電、送電、配電および管理に必要な原価と適切な事業報酬を加えた総括原価主義によるものである。 この方式では、供給責任*を電力会社に負わすことにより、長期的に見ても安定かつ信頼度の高い電力を確保できる反面、費用低減意欲が効果的に機能し難く産業の国際競争維持の立場から問題があるとの評価が大口消費者や一部の経済学者及び国の側で議論された。
そこで、卸電力市場と小売り市場を自由化し、新規供給事業者の参入を認め、自由競争の下で低廉な料金を達成する事を目的として、いわゆる電力の自由化(電力市場の自由化)が進められる事となった。
まず、平成7年に、卸電力市場が一部自由化され、電力会社は自社の開発計画に関して、自社の発電電力の外に、新規発電事業者の参入を認め、公募による入札によって、より安い電力を購入することが義務付けられた。
次に、平成12年からは大口電力小売り市場が自由化され、大口消費者(20KV以上、2000KW以上)は入札により供給者を選定することができるようになり、新規参入事業者および他地域の電力会社の参加が可能となり、自由価格競争が取り入れられる事となった。
この制度は3年を目途に評価し直す段取りとなっており、平成13年11月から経産大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会電気事業分科会の場で自由化の今後の進め方について検討が行われている。
その主な論点は、
(1) 自由化範囲の拡大:全面的な小売り自由化を目指すか ? あるいは中間的段階を踏むか?(大口消費者範囲の拡大や一般消費者をも対象とする場合の制度設計。ユニバーサルサービス{僻地消費者にも同一料金で供給する制度}の継続可否、等。)
(2) 送電系統部門の扱い:電力会社間を跨ぐような電力取引きにおいて生ずる電力の託送料金(送電線使用料等)の設定方法や送電系統全体の安定な運用を維持するための利用者間のとりきめ(系統の安定性を維持するための発送電一貫体制方式、新規参入者の電力売買の責任明確化、系統の安定運用責任)
(3) 公正なる競争市場を確保するための電力取引所の創設
(4) 長期エネルギーセキュリティー確保の観点からの原子力発電の位置づけ、活用推進策の制度化。
等である。この検討作業は平成15年初頭を目途に進められている。
いずれにせよ、電力自由化は、電気という商品と系統設備運用の技術的な特殊性を十分理解の上、米国カリフォルニア州の事例*なども参考にして
(5) 消費者の利益最優先(安定性、利便性、信頼性および低廉性)
(6) 公正な市場の制度化
(7) 長期エネルギーセキュリティーの確保
を念頭に確実な結論が導かれる事が切に望まれる。 (篠田 )