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原子炉格納容器の耐圧漏えい試験と漏えい率試験

 

1 目的と概要

原子炉格納容器は第1図に示すように、沸騰水型においても、加圧水型の場合でも、原子炉系の主要部分を格納し、配管の破断などにより原子炉の一次冷却水などが漏出するような、原子炉冷却材喪失事故によって格納容器内に蒸気やガスなどが充満し、内圧が加えられる場合でも、十分それに耐えて放射性物質などが外部に漏れ出ないようにするためのものである。したがって、その構造の強度と漏れが許容値以下であることを確かめる目的で、プラント建設中での原子炉格納容器の完成時には耐圧漏えい試験、プラント完成前には漏えい率試験、営業運転開始後の定期検査時には漏えい率試験を行うことが定められている。  

       

これ等の格納容器には多数の配管などが貫通しており、例えば沸騰水型の福島第一原子力発電所の800MW級では約450本ある。配管にはそれぞれ弁が設置され、これ等の弁を閉めることで格納容器バウンダリーと外界とを遮断する構造になっている。

この場合、点検する弁の数は約1,000個ある。格納容器の出入口となる所員用エアロックのシール部や弁のシート面などからの微量な漏えい量に対し一定の基準値を設定し、格納の目的を果たしているかを確認する必要がある。

原子炉圧力容器を含む一般の容器においては、耐圧試験時に目視検査などで漏えいのないことを確認するが、格納容器においては漏えい量が基準値を超えていないことを測定するための漏えい率試験を行うことが規定されている。

 

2 耐圧漏えい試験と漏えい率試験

原子炉格納容器は相当に大型の容器であって、福島第一原子力発電所800MW級の場合、ドライウエルの高さが34m、直径が20mある。その下部にドーナツ型をしたサプレッションチェンバがあるが、この円環部の直径は33.5mで、全体の内容積が約7,700m3ある。

このため試験は水圧で行うことが出来ないので、空気か窒素ガスで、圧力を加えて行われる。建設時の試験は格納容器が発電所の建設中、格納容器単体で完成した時の耐圧漏えい試験と、配管など格納容器を貫通する部分の工事が終了し燃料装荷前の時点での漏えい率試験の二回行われる。耐圧漏えい試験は格納容器に万一想定された圧力が加えられても十分耐えるかということを確認する耐圧試験と、引き続いて石けん水を用いて漏れの有無を確認する漏えい試験とが行われる。これらの試験条件を第1表に示す。

第1表 格納容器の耐圧漏えい試験と漏えい率試験(沸騰水型の場合)
試験の種類
耐圧試験

漏えい試験

(石けん水試験)

漏えい率試験
測定時間
格納容器完成時
最高使用圧力×1.125

最高使用圧力×0.9

(設計圧力)

施行しない
燃料装荷前
施行しない
施行しない

最高使用圧力×0.9

(設計圧力)

24h
定期検査時
施行しない
施行しない
同上
6h,
10年に1回
24h

また、原子力発電所は通常約1年運転した後に定期検査が行われ、所員用エアロックを通じて格納容器内に作業者が立ち入ったりする。これ等を閉鎖した後、漏えい量が基準値を超えていないかの確認のため測定が行われる。この場合は漏えい率試験だけで耐圧漏えい試験は行わない。

 

3 漏えい率試験の方法

漏えい率試験は試験に先立ち内圧を最高使用圧力の0.9倍に高めた後、長時間放置しその間の圧力降下の割合から漏えい量を算出する。降下した圧力を△Pとし、最初の圧力をPとすれば漏えい率は △P/P で表されるが、実際には容器内の温度と湿度の変化があるためその補正をする必要がある。















この微小な圧力の降下量を正確に測定する方法として、加圧水型では絶対圧力法が、沸騰水型では基準容器法が使われている。絶対圧力法は格納容器内の圧力を直接計測し、それを温度補正して漏えい率を算出する。この場合、圧力計の精度が極力高いことが望ましいのと、格納容器内の平均温・湿度を正確に出すため、第2図に示すように出来るだけ沢山の温度検出器、露点検出器が適切に配備されている。

第3図に示す沸騰水型の漏えい率試験では、あらかじめ全く漏えいのないことを確認した細くて肉厚も必要以上に厚くしないパイプ状の基準容器を格納容器内に配置し(同図におけるRC−1〜6)、 漏えい率試験開始時に基準容器と格納容器内の圧力を同一にし試験に入る。

福島第一原子力発電所800MW級の格納容器では、基準容器は直径50mm、肉厚1.5mmである。格納容器から漏れがあれば両者に圧力差が生じるので、それを測定する。基準容器法でも絶対圧力法と同様に沢山の温度検出器や露点検出器が適切に配備されている。



4 漏えい率試験の実際

格納容器の許容漏えい率はプラントによって違うが、わが国では加圧水型が24時間当たり0.1%、沸騰水型が同じく24時間で0.5%である。この違いは建屋の構造等を配慮して定められたものである。

第2表  国内の発電所の漏えい率試験の結果の例
発電所

漏えい率試験

の時期

設計圧力

kgf/cm2g

許容漏えい率

%/日

計測値

%/日

  敦賀1号
定期検査時
4.35
0.5
0.168
  美浜1号
完成時
2.39
0.1
0.015
  美浜2号
完成時
2.45
0.1
0.032
  福島第一・1号
完成時
4.35
0.5
0.09
  福島第一・1号
定期検査時
4.35
0.5
0.20
  福島第一・2号
完成時
3.92
0.5
0.021
出典:JEAC 4203-1994 原子炉格納容器の漏えい試験規定

基準容器法による格納容器の漏えい率試験の実際を次に示す。

第4図は漏えい率試験のプロセスを示している。加圧には空気又は窒素ガスを使用することができる。所定の試験圧力に達する前に弁等からの漏えいがないことを確認するために予備石けん水試験を行う。

その後、設計圧力である最高使用圧力の0.9倍まで加圧し、格納容器内部に取付けられた配管の保温材等に加圧気体が浸透し平衡状態が安定し、内部の気体の動きが全体として静定するまで、大体6~12時間位おいたところで、漏えい率試験の計測を開始する。計測開始後は一定時間ごとに圧力・温度・露点温度(又は湿度)・格納容器と基準容器の圧力差を計測し、計測開始時点からの漏えい量を計算する。

 





所定の計測時間が終了したら第5図に示すように横軸に試験時間、縦軸に漏えい量をとり、各計測時刻毎の漏えい量をプロットし、統計的に平均漏えい率を算出する。最終的に試験におけるデータのばらつき誤差を加え、それがその試験の漏えい率となる。これがあらかじめ決められた基準値を超えていなければ合格となる。

特に定期検査では弁を操作したり、開放点検したりしているため、閉め方が不十分であって、漏れなどがないように漏えい率試験の前に十分な確認が行われている。

これ等の漏えい率試験は経済産業省の検査対象であるため、原子力安全・保安院の係官の立会いのもとに行われ、合否の判定がなされる。

なお、格納容器の構造等については、原子力百科事典 ATOMICA http://mext-atm.jst.go.jp/atomica.html に詳しく解説されている。 参照されたい。

(天野牧男)