ドイツの全量固定価格買取制度は誤りだ
ドイツの風力発電の景観と導入実績
【PJニュース 2010年3月23日】林 勉 投稿
ドイツ政府は2000年から再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(フィード・イン・タリフ)を施行してきたが、10年近い経験を積んだ現在、消費者に莫大な長期負債を残すとともに、その目指す目標がほとんど果たされていないむしろ正反対の結果となっていることがドイツのルール大学など3大学で構成される経済研究シンクタンク(RWI)の調査研究で明らかになった。
RWI(ライン・ヴェストファーレン)経済研究所が2009年11月に発表した「再生可能エネルギー推進の経済的影響」と題する論文の要点は下記だ。
(1)20年間のグリーン電力購入を保証しているので、仮に2010年に制度を終了させても消費者側の支払債務は太陽光発電で533億ユーロ(7兆円)、風力発電で205億ユーロ(2.7兆円)の巨額になる。
(2)CO2削減コストは、太陽光発電は716ユーロ/トン、風力発電は54ユーロ/トンで、欧州排出権取引市場価格(18ユーロ)のそれぞれ40倍、3倍と高価なものになっている。
(3)雇用創出面でも、太陽光の場合実際にはアジアをからの輸入によって設置数の半分が占められている。太陽光従事者48,000人に純増コストを割振ると、1人当たり175,000ユーロ(2,200万円)の補助金を出していることになる。
(4)エネルギー・セキュリティー増大を目指しているが、実際にはバックアップ電力としてガス火力発電を待機させる必要があり、2006年には5.9億ユーロ(750億円)を要した。またガスの36%はロシアから輸入されるため、セキュリティーの向上ではなく引下げとなっている。
(5)コスト削減とイノベーションを目指して電力購入価格の逓減方法を採り入れているが、実際には正反対の結果となっている。太陽光発電の投資家は今日現在の高い価格での長期販売を望み、技術の改善には無頓着である。政府が勝者と敗者を分けるようなプログラムでは効率的なエネルギー・ミックスは実現しない。
(6)競争力を持たない揺籃期の技術については、政府は大規模な生産を推進するよりも研究開発に投資する方がコスト効率は高い。特に太陽光発電についてそう言える。
わが国では鳩山政権のもと、25%削減製政策が取られている。このために自然エネルギーに大きな期待を寄せる声が大きいが、過度の期待はドイツの例を見ても危険だ。効率的なエネルギー・ミックスを指向すべきだ。特に原子力の重要性について社会の理解向上が必要だ。【了】