九州大学における学生とシニアの対話実施概要

 松永一郎

1.実施主旨

 昨年度から続けている「学生とシニアの対話(学生のキャリアデザイン&夢支援)」の九大版。日本原子力学会の学生連絡会の活動の一端として、原子力/エネルギー系を主体とした学生とシニアの交流を図る。

 

2.対話の目的

 原子力系理系学生等とシニアとの対話を通して、学生とシニアの相互理解を図ると共に、今後の原子力、エネルギー産業について共に考え、これからの対話のあり方やエネルギー教育の実践あり方の参考にする。また、彼ら学生が社会へ出るまえに、原子力OBの経験や気概を少しでも吸収できる機会を提供し、今後の実務への自信に繋げてもらう。

 

3.対話の実施

(1)   日時 5月12日(金) 16:30〜19:50

(2)   場所 九大箱崎キャンパス

(3)   参加者

@     学生35名

(学部生13名 大学院生22名)

学生連絡会:1名(東工大)

学生側幹事:3名(九大)

A     シニア

     エネルギー問題に発言する会会員8名

石井陽一郎、金氏顕、竹内哲夫、中神靖雄、林勉、松岡強、山崎吉秀、松永一郎

     その他

鈴木一雄氏(東電核燃料サイクル部部長)

B     コーディネーター  天野治氏(電中研、日本原子力学会)

C     大学

         九大大学院エネルギー量子工学部門 工藤和彦教授

         北大エネルギー環境システム専攻  島津洋一郎教授

(4)   実施内容

@     総合講演

・エネルギー問題を原点から考えよう    林氏

A     対話

7グループに分かれ、シニア1〜2名に対して、学生が5名ずつついて対話。

工藤教授、島津教授、鈴木氏はオブザーバーとして、グループに入った。

対話の題材は学生に対する事前アンケートの結果から、各グループが決めた。

対話終了後に各グループから対話内容のまとめと説明がなされた。またシニアを代表して、金氏氏から講評が、工藤教授、島津教授からは感想がなされた。

(5)   結果

シニアから感想を収集。学生には事後アンケートを実施した。

(シニア感想概要・・個別意見をある程度集約)

@                        運営全体がスムーズになされており、感心した。これは偏に幹事役の学生、それを陰で支えた先生方の努力の賜物だと思う。また、学生連絡会も回数を重ねた結果、運営のノウハウの伝授に慣れてきたことも見逃せない。

A                        一大学のエネルギー・原子力系だけで、40名近い学生が自主的に参加していることはたいしたものである。皆問題意識をもって対話に臨んでおり、当初自分の選択した進路に対して自信がもてないように見えた学生も、対話終了時には確信をもって進路選択するものと思われる。

B                        九電玄海発電所でプルサーマルがスタートすることもあり、プルトニウム利用や核燃料サイクルに関心を持つ学生が多かった。産業界がしっかりすることが学生を元気付ける一番の薬である。また彼らの疑問にいつでも答えられるようなシステム作りが必要だろう。

C                        九州の特色から、東京、大阪からかなり離れているためか、意識的にはあまり親原子力−反原子力といった意識からは遠く、率直に原子力を見ているような気がする。また、韓国、中国に近いためか、国際的な感覚はむしろ優れているようである。

そのため、いずれのグループの学生からも、シニアから原子力や企業に関する情報を素直に吸収しようとする意気込みが感じられた

D                        発表者の1人に女性がいたが、話を簡潔にうまくまとめていた。このような女性が原子力方面に進出することは、原子力全体のイメージアップにおおいに貢献するものと思われる。

E                        今後の課題は原子力系以外の工学系学生や文系、特に教育学部系の学生との対話である。このような学生たちに対しては、とくに基調講演や予備学習が大切であろう。

F                        今年の9月に対話が予定されている北海道大学から島津教授がわざわざ参加され、対話に加わられた。学生との橋渡しをしていただけるとの事であり、秋の対話に期待が持てる。

(学生のアンケート結果概要)

35名に配布し、19名から回答があった。

学生とシニアの対話の必要性を感じたものは18名(95%)、対話の内容に満足したものは16名(84%)であった。またエネルギー危機、及び原子力に対するイメージに変化があったものはそれぞれ12名(63%)、7名(37%)であった。

 以下にその内容を示す。

 

回答率:19名/35名

4.まとめ

 今回で、昨年7月に始まった対話は6回目となり、初めて九州地区での開催となった。一大学のエネルギー・原子力系学生だけ、40名近くを対象にして実施するのは初めてであったが、学生側、シニア側の満足度は高く、まずは成功したといってよいだろう。

九州といった土地柄か、あまり反原子力−親原子力という流れに影響されずに来たのか、率直に意見を述べる学生が多く、対話を通じて彼らの選択に間違いが無いとの自信をつけることができたと思われる。

 対話の運営はスムーズであった。これは学生側のコーディネーターを勤めた中村誠君(D3)の力量に負うところ大であるが、工藤先生をはじめとする諸先生方のバックアップや学生連絡会からのノウハウの伝授等にも助けられたことであろう。また、次回の北大における対話のために、わざわざ札幌からオブザーバー参加された島津洋一郎北大教授の存在も、学生にとって刺激になったものと考えられる。

 なお、5月22日に原子力学会内にシニアネットワーク(SNW)が設立されたので、今後はこことエネルギー問題に発言する会とが連係を取りながら、学生とシニアの対話を進めることになる。

 最後になりますが、今回の対話を陰で支えて下さいました九州大学の工藤和彦教授、福田研二教授、稲垣八穂広助教授他の方々に深甚なる感謝の意を表します。

 

5.今後の予定

 9月26日(火) 14:00〜18:00 北海道大学における対話

 

6.対話写真

 

7.添付資料

添付1  シニア感想(含む:対話時のシニア代表講評(金氏氏)、閉会挨拶(天野氏))

添付2  学生の事後アンケート結果

 



学生総合司会:中村 誠 君(D3)

 

林勉幹事 基調講演

 

竹内哲夫氏 挨拶

 

対話風景 1

 

対話風景 2

 

学生発表 1

 

学生発表 2

 

金氏 顕氏 の講評

 

島津洋一郎北大教授 感想

 

工藤和彦九大教授感想

 

天野 治氏 閉会挨拶

 

懇親会風景

 


添付1 シニアの感想

天野 治

対話の感想)
学生の中村さんの司会、取りまとめがすばらしかった。また、彼がこれをやることで、学生として成長したことを感じた。
福田先生、工藤先生、島津先生の熱意を感じた。先生の熱意も非常に大事だと感じた。
学生連絡会の春日さんの参加には、本当にえらい。
学生が対話することで、目の色が少しずつ、輝きだすのを見た。対話を通じて、考え、頭が活性化していくようであった。
(閉会の挨拶)
学生とシニアの対話の目的は、学生のキャリアデザイン支援、夢支援です。
以下の3点がポイントだと思います。
1. 将来の見通し
2. 自分が抱えている疑問
3. この対話で自分の目を覚ます
「将来の見通し」は豊かな石油にサポートされた時代は、終わりつつある。その時代をどう生きるのか、将来はどのようになって行くのかを人生経験豊かなシニアと議論する。
「自分が抱えている疑問」を対話の中で、投げかけ、それを繰り返すことで、本質が見えてくる。
「対話で目を覚ます」自分の進路や、本当にやりたいことは何であるのか。経験豊富なシニアの具体的な説明に、次第に自分のやりたいことが見えてくる。
対話を実施する前と、実施した後で自分の中で変わったものがあるでしょう。それを大事にしながら、本当にやりたいことを見つめ、その実現に向けて、自分を高めるようにしてください。それがこの対話の本当の目的です。

石井陽一郎

年甲斐もなく今回職業カラーのないヤング諸賢とひざを交え語りあうことが出来たことはほとんど記憶にないほどなので、喜びであり、大感謝するしだいです。それにしてもD組の女性のパワーは皆様ご指摘のように感心しました。男社会なんていう企業もこういう人をもっと採ることを考えた方がよさそう。社会は流動し、それは次代のもの 私自身はどの時代の共通項でもある役に立つ資格、ソフト開発力にも勧誘、言及しておきました。狙っている人はいたし、刺激になったのではと思っていますが。

 質問、意見がもうちょっとあるかなと思っていましたがほとんどなかった。ややこちらのしゃべりすぎも抑えなければとも思いましたが。

 二次会の部はこれまたたいへんよいものでした。幹事方のご努力はあったのでしょうが、先生方3人、学生が36人と大勢参加されたことも意義がありました。


金氏 顕

@私は前回3月の関西5大学学生との対話に続く2回目、母校でもあり期待と若干の不安を持って参加した。前回も今回も学生側の準備が非常にこまめで実りのあるものになった。司会をした博士課程の中村さんほか、上級生がよく準備をし、また表にはあまり出ませんでしたが工藤先生始め先生方も支援したことと思う。

また、原子力学会学生連絡会から東工大の春日さんの参加、さらに9月の原子力学会秋の大会に合わせて対話の会を予定している北海道大学の島津先生の参加は、この活動が学生、大学にとって意義あることとして評価され全国大に定着しつつある現れと思われる。島津先生が大学の乏しい予算の中で北海道から来てくれたことは大変嬉しかった。北海道では原子力学科は北大だけですが、他の大学にも声を掛けるとのことでしたから9月は期待している。
A九電玄海で2010年にプルサーマルを実施決定のニュースの直後でもあり、関西のときよりも学生は燃料再処理、高速増殖炉に大変関心が高かった。特に高速増殖炉の開発について、私が知っている今後の動向を話したら、みな目を輝かさせて聞いていた。エネルギーセキュリティーからもこれからエンジニアになる若者は軽水炉より関心が高いのは当然だが、九電のプルサーマルが学生たちに良い刺激と影響を与えている。やはり産業界がしっかりするのが学生たちの向学心に一番効くことを改めて認識した。
B今回は対話の会の前に原子力学会九州支部で竹内さんの講演があった。カジュアルウエアの若者が沢山参加していたが、全部あとの対話に参加する九大学生たちだった。それと対話の会での林さんの基調講演で、すっかり彼らの知識と意識は高まっていた。これからの対話でも事前の講習は原子力専攻で無い学生も参加する場合には特に大事である。

シニアのコメント(当日話した概要)
@原子力業界の今後の動向、自分の職場を心配している方も多いかと思うが、軽水炉、燃料サイクル、FBRなど皆さんの活躍の場はまだまだある。特にサイクル、FBRは皆さんたちの双肩に掛かっているといっても良い。
A原子力、放射線に対する一般社会、マスコミの抵抗感、拒絶反応に戸惑いを覚えている方が多い。これはとりもなおさず皆さんが社会に出て原子力の仕事に従事するに当たっての不安でもあると思う。皆さんは大学にいる間に正しい知識を身につけ、身近なところから理解促進の行動(近大学生の「エネルギー研究会」の活動を紹介)を起すことが大事。さらに社会に出てからは自分の体験からも肩身の狭いような思いをすることがあるが、社会の発展に貢献しているとの高い倫理観を持って仕事を欲しい。
Bこの対話活動をより広く、恒常的に開催できるよう原子力学会に「シニアネットワーク」連絡会を設立することになった。学生連絡会と連携して定期的にやりたい。次に九州でやる時は原子力専攻の学生だけでなく、他の学科、文科系なども参加していただくことを期待している。

竹内哲夫

@このような「シニアと学生対話」を通して全会出席したものの印象として、毎回良くなってきたが、今回は特に、導入部がスムーズで且つ仕上のパーテイまで闊達なシニア・学生の対話交流があり。きわめて意思疎通に成果があったと思う。
この事は、この活動が全国版として定着し、意義が学生側に理解されてきたことモあるが、それ以上に今回準備に当った先生方、学生幹事の事前の準備、広報の御蔭だと思う。

感謝したい。
A私の担当で集まった学生は、院生、修士、学部と異なるが学科選択の当初は「新エネルギー」希望で道を選んでいる。そして今回のシニアとの対話で「原子力・サイクル」がやはり最も重要だと確信し、今後はもうブレませんと素直に述べていた。今回のような個人的対話、濃密教育があって、初めてシニアの思いが伝わる現状である。
今回も確認したが、原子力・放射線への嫌味の教育を受けた中・高校時代の歪みを受けて『新エネ」専攻として「エネルギー学科」に来たが、当初から最近まで原子力は本人たちも嫌だったと告白している。教育問題はもっと若い世代、家庭まで幼児まで歪みを治す必要がある。
Bこれは余談。
ジェンダーに触れたくないが、わが班の取りまとめは博士課程の女性だったが、年齢差もありほかの男子学生とは圧倒的にまとめと感性、知識に差があり、大人と子供だった。かの女は次の月曜